1. 設計者CAEステップアップのロードマップ
設計者CAEステップアップの必要性
産業界の動向として安全性第一、軽量化およびエコを目指した製品開発が主流になっている現在、CAEフロントローディングの推進およびそれを実現する設計者CAEの強化が早急に求められています。
このような環境において市場競争力を高めるには余肉たっぷりの従来設計でなく、強度を確保しつつ余分な肉を削ぎ落とした理想体すなわち最適設計が重要になってきます。そしてこの最適設計を行うには現実の現象をより正確に捉えたリアリスティックシミュレーションへと設計者CAEのステップアップが求められます。
例えば静的な現象のみを対象とした静解析で設計していても、動的な挙動を最適化するには動解析の取組みへとステップアップが必要になります。構造解析だけでなく流体解析や熱解析そして磁場解析へと取組みはますます広がりマルチフィジックス(連成)分野へと広がっていきます。このように設計者CAEステップアップを駆使して魅力品質の向上に努めることにより市場競争力に優れた製品開発が可能になると考えます。
図1に設計者CAEステップアップのロードマップを示します。この図が示すようにフロントローディングと最適設計を推進するにつれて設計者CAEの範疇はますます拡大することになります。
図1.設計者CAEステップアップ・ロードマップ
まずは流体解析にチャレンジ
流体解析は構造物そのものではなく構造物に接する周辺の空間が解析領域になります。また流体解析の計算には差分法や有限体積法などの解法がありますが、これらは解析領域である空間を構造格子または非構造格子に分割して解析モデルを定義します。
この格子への分割は設計者にとって設計に直接関係しない作業にもかかわらず大きな労力を必要とします。近年は自動分割機能が強化され時間短縮が図られていますが、メッシュ分割という工程そのものは皆無にはなりません。
そこで最近はメッシュレスである粒子法と呼ばれる解法が着目され関心が高まっています。粒子法は流体を粒子の集合体としてモデル化して流体の挙動を粒子間の関係でシミュレーションします。流体の存在する領域だけに粒子を完全自動で生成させます。前述の差分法や有限体積法では流体が存在しない空間も含めて解析領域である空間全体を格子に分割する必要があり、複雑に入り組んだ空間があるとそれも対象になります。粒子は領域の3D形状と粒子の直径を指定すれば自動的に生成されます。従って設計者は流体と接する構造物の3D形状を定義するだけで容易に解析モデルが出来上がります。
設計者CAEステップアップとして流体解析に初めてチャレンジする設計者にとっては非常に取っ付き易い解法と言えます。
ただし粒子法は流体解析において万能な解法ではありませんので適材適所での適用をお勧めします
次回はCATIAユーザーが容易に流体解析を行えるように開発した粒子法CFDソフトウェアParticleworksとCATIAの連携システムをご紹介します。
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