2. 設計者CAEのメリット(設計者CAEと専任者CAEの違い)
物を造れば売れる一昔前の頃は多様な消費者ニーズに応えて多種多様な製品を数多く揃えるために設計者は類似設計や派生設計に追われていました。そして設計作業は過去の設計の計算式や勘に頼って安全サイドに部材の寸法を決め材料を選択することが多くありました。
しかし昨今のデフレ時代は消費者の需要も消極的になり、安全・安心・省エネに優れた製品を慎重に選ぶようになり、企業は生き残りをかけて安全でかつ省エネに優れた製品を短期間に開発して差別化を図る必要に迫られています。設計者CAEは正にこの目標を実現するために用いられます。
設計者CAEの実践は部品の実形状に近い3Dモデルを使い、高度な知識を必要とせずに容易に有限要素法解析を行って、すぐにその設計の妥当性を確認することができます。従来の近似計算式のような最大値のみの評価に終始せず、製品上の応力分布やウィークポイントを観察できるため設計検討の自由度が大きく広がります。設計者CAEは勘や経験に頼っていた従来の過剰設計を回避でき、前号で述べたCAEフロントローディングと相まって製品開発の上流過程から最適な設計を目指すことができます。
図1. 設計者CAEを利用した設計検討
設計者CAEは製品の付加価値を高める、すなわち魅力品質の創造を目標にしています。一方専任者CAEは高度な解析技術を駆使して製品の安全性や信頼性を確保するために行われます。すなわち製品の当たり前品質を保証するための解析です。
設計者CAEと専任者CAEはどちらも重要なプロセスであるが狙いが異なる
設計者CAE | 専任者CAE | |
---|---|---|
設計者または設計部門エンジニア | 解析を行う人 | 解析専任部門のCAEエキスパート |
魅力品質の創造 | 狙い | 当たり前品質の保証 |
標準的な使用環境条件 | 解析条件 | 最悪な使用環境条件 |
相対値比較による設計判断 | 結果評価の方法 | 絶対値による品質の確認 |
注)※はミシガン大学の菊池先生が2006 JCFの講演で用いられた言葉を引用
図2. 設計者CAEと専任者CAEの違い
どちらも重要なCAEではありますが、実践する主役と狙いが異なることを理解いただければ幸いです。
次号からはテクニカルなトピックに移り、「線形解析と非線形解析の違い」と題して設計者にとってのリアリスティック・シミュレーションの必要性に触れたいと思います。
以上
2013年 2月
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