10. 1次要素と2次要素の使い分け
H法と呼ばれる有限要素法ソルバー(CATIA ELFINIなど)では、一般的に1次要素と2次要素の2つの要素タイプが用意されており、利用者が適宜選択して解析を行います。この選択の際にヒントになるように、1次要素および2次要素の特徴について以下お話します。
テトラ1次要素は4節点で構成され、テトラ2次要素は10節点で構成されるので、同じメッシュサイズで分割した場合に、1次要素で分割した方がモデル全体の節点数が少なくなり、同様に解析モデルの自由度も少なくなるため、計算時間が短くなるメリットがあります。しかしある程度の計算精度を保つためには、1次要素の特性上細かく分割しなければならず、それにより節点数が増えて計算時間も増してしまいます。
そもそも1次要素または2次要素と名付けられる次数とは、その要素が持っている変位関数の次数を表しています。要素の変位関数が1次関数で表現される1次要素は、変位量が要素内で線形に変化します。よって変位を微分して得られるひずみは一定の値を持ちます。これは定ひずみ要素と呼ばれることがあります。また要素の変位関数が2次関数で表される2次要素は変位が2次関数で変化するのでひずみは線形に変化します。そして応力もひずみと同様線形に変化します。
上記のように、1次要素は定ひずみになりますので、応力変化の激しい部分は十分細かく分割してその変化を表現する必要があります。
図1に定ひずみの特性を有効に使える単軸引張り状態の角棒を例に示します。
テトラ1次要素 | テトラ2次要素 | 理論値 | |
---|---|---|---|
節点数 | 189 | 1001 | |
要素数 | 456 | 456 | |
引張り応力 (MPa) | 5.0 | 5.0 | 5.0 |
最大変位 (mm) | 0.0143 | 0.0143 | 0.0143 |
図1. 引張荷重に対する計算精度比較
ここで角棒の断面上には均一にひずみが生じており、引張応力(垂直応力)も均一に分布しています。このような応力状態に対しては1次要素でも2次要素でも要素分割が粗くても理論値と合致した解が得られます。
図2に同じ分割数のときの1次要素と2次要素の計算結果を比較しています。
均一な垂直応力が発生する場合は、1次要素も2次要素も計算精度は変わらない
図2. 引張荷重に対する計算精度比較
一方、図3にはひずみの線形特性を有効に使える例を示します。
テトラ1次要素 | テトラ2次要素 | 理論値 | |
---|---|---|---|
節点数 | 1027 | 1001 | |
要素数 | 3534 | 456 | |
最大曲げ応力 MPa | 272 | 302 | 300 |
最大変位 mm | 5.04 | 5.77 | 5.71 |
図3. せん断荷重に対する計算精度比較
これは角棒にせん断荷重を作用させて角棒全般に渡って曲げ応力が発生する場合です。角棒の断面上の応力分布は、線形に変化します。これは前述のとおり、2次要素の変位関数で精度よく表現できるものになります。1次要素でこのような線形の応力分布を表現するためには、直線分布を階段状の分布で近似することになるため、やや細かく分割して近似誤差を少なくする必要があります。
図4に示す通り曲げ応力状態を1次要素で表現するには細かく分割してもなお誤差が生じます。よって応力の結果を詳細に評価する場合はなるべく2次要素を使うことをお薦めします。
曲げ応力が発生する場合、2次要素は粗い分割でも計算精度は良いが
1次要素は細かい分割でも計算精度は不十分
図4. せん断荷重に対する計算精度比較
応力解析と異なり、固有振動解析など剛性分布を的確に表現すればよい場合は、局部的な変化が少ないので1次要素でも精度を確保した解が得られることがあります。もちろん厳密な精度を求めるならば、2次要素を用いる方が安全ですが、節点数が膨大になり固有値解析などの繰り返し計算では、計算時間が膨大になってしまいます。計算精度と計算時間はトレードオフの関係にありますので、大規模モデルの計算では、1次要素を使用して自由度数の増大を抑えて、実用的な計算時間で解を得る試みも必要になると考えます。
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さて、本連載コラムも終盤に近づいておりますが、次号では筆者が10年ほど前に発案しました、CAEテンプレートの活用についてお話します。
以上
2013年 10月
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