6.計算精度を保つメッシュサイズの目安
設計者CAEの経験が浅いときはメッシュ分割をほとんど意識せずにシステムに任せて計算する場合が多いですが、経験を積んでいくにつれて、自分でメッシュサイズを設定して計算精度を良くしたいと考えるようになります。
このような場合にどのぐらいのメッシュサイズを設定すれば良いか迷うことも多いかと思いますが、昨今のCAEソフトウェアでは計算精度を保つためにメッシュサイズを最適に設定する機能が備わっているものが多くなっており、CATIA V5アナリシスの場合はアダプティビティ機能がそれに該当します。 最適なメッシュサイズに言及する前に計算精度について整理したいと思います。
現物の事象を真の基準とした場合に自分の計算が正しいかどうかは図1に示すようにモデル化誤差と数値計算誤差を把握する必要があります。前者は現物の事象をシミュレーションモデルにいかに正しく置き換えるかという精度であって、経験やノウハウに依存するところが大きく、定量化するのは困難な場合が多いです。一方、後者は有限要素法による数値解析の問題になり定量化は比較的可能です。
図1. CAEにおける2つの誤差
現物の実験による測定結果とCAEによる解析結果を比較するには、この2つの誤差が含まれることを念頭において照合する必要がありますが、本稿では後者の数値解析誤差についてどのように対処して計算精度を高めるかをお話します。
金属や樹脂などでできた部品は固体の連続体であるが、有限要素法で解析する場合はその形状を有限の要素にメッシュ分割して離散化します。連続体の形状を離散化モデルに近似して計算するので自ずと誤差が生まれます。その誤差を最小限にして計算精度の高い解析結果を得るためには、できる限り細かいメッシュに分割して有限要素モデルを連続体に近づける必要がありますが、メッシュが細かくなればなるほど節点数が増えて解析自由度が膨大になるため高速なコンピュータを使っても計算時間が長時間に及んでしまいます。
すなわち計算精度の向上と計算時間の短縮はトレードオフの関係になりますので、むやみに細かくすることは設計者CAEでは現実的な方法ではありません。
最近のCAEソフトウェアは要素の定式化が改良され進歩しているので、応力変化の緩やかな箇所は粗いメッシュでも精度良い計算結果が得られるようになっています。
しかし応力変化の激しい箇所はメッシュ分割をある程度細かくする必要があり、そのような箇所はメッシュ分割を徐々に細かくして応力がある値に収束するまでメッシュの細分割と計算を繰り返し行い、計算精度を上げていきます。
図2はCATIA V5 GPSのアダプティビティ機能を用いて最適なメッシュサイズを自動設定して計算精度を向上させた一例です。これは前号のコラムに掲載したものと同じモデルを使っていますが、前号の手動で細分したときと同様に応力集中部の最大応力が110MPaに収束しています。このときはグローバル誤差率の目標を5%に設定してメッシュ全体の誤差率が5%以下になるまで再メッシュ分割を自動で繰り返して計算してくれます。
またESTを使えばローカル誤差率を与えることができるので、よりきめ細かなメッシュサイズ設定により計算精度の向上が図れます。
図2. アダプティビティによる計算精度を保ったメッシュ例
最適なメッシュサイズについてさらにお知りになりたい方は、弊社開催のCAE教育コース「設計者のための有限要素法」の受講をお勧めします。
次号からは少し趣きを変えてCATIA V5アナリシスの便利な機能について3号続けてお話しします。まず最初は「仮想パーツの活用」です。
以上
2013年 6月
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