3DCSとは
日本の製造業は優秀な技術者に支えられながら世界をリードしてきましたが、開発期間の短縮やコスト削減、グローバル化などに伴い、製造業を取り巻く環境は急速に変化しています。そのため、従来の設計・生産技術・品質保証手法ではグローバル競争の中で立ち遅れかねません。
欧米では早くより幾何公差を採用した公差解析が導入され、経験の浅い技術者でも安定した品質かつ低コストで生産する体制構築に取り組んでいます。他社よりも早く、高品質かつ低コストでモノを製造するための有効なソリューションが3DCSによる公差解析です。
3D公差解析ソフトウェア3DCSは、米国DCS社が開発した3次元公差解析ソフトウエアで、自動車業界、航空機業界、電機業界で数多くの実績があります。 製品と製造プロセス要件の定義・解析・変更を繰り返しシミュレーションすることができ、設計部・生産技術部・品質管理部の皆様が公差の世界を共有することができますので、設計の初期段階・基本設計がまだ流動的な段階で公差解析を行うことをお勧めします。
3DCS活用のメリット
『勘と経験と度胸』による"公差の限界"…設計現場での要求が急速に高まっています!
公差解析に関しては、多くの企業において教育がきちんとされているとは言えません。若い設計者は、以前の同種部品の公差をそのまま利用することが多く、まったく新しい製品(部品)の場合は『KDD(勘と経験と度胸)』で設定しているというのが実態です。そういったことが、「Fコスト(失敗コスト)の増加」「次期開発商品の遅れ(設計者の手離れの悪さ)」等の悪循環に繋がっています。
また、昨今の国際競争で求められるのは、設計者側の製品品質や仕様を満たすための要求と、製造側の組み立てやすさに対する要求の両方を満たす公差を設定することです。厳しすぎる公差を設定すると、加工工程・設備にコストがかかってしまい、公差を大きく設定したり適当に設定してしまうことによって、組付け時に組付かない、あるいは組付いたとしても製品に不具合が生じる危険性があり、結果としてコスト増につながりかねません。
3DCSを導入することで、公差(設計)が適正でない場合に起こってしまう問題に対しても適切な対応ができ、
- 開発時間短縮 + やり直しの費用削減 + 過剰品質の防止ができます
- 製品設計と製造プロセスを最適化し、高品質な製品ができます
3DCS 製品リスト
3DCSには、CATIA V5版と、3DEXPERIENCE版、Windows環境で動作するMulti-CAD(スタンドアロン)版が あります。それぞれのソフトウェアは以下の特徴を備えています。
CATIA V5版
- CATIA V5 FT&Aで入力された情報がそのまま活用できます。
- CATIA V5画面の使い慣れたGUI環境下で、違和感なく3DCSの操作ができます。
CATIA 3DEXPERIENCE版
- CATIA 3DEXPERIENCEで入力された情報がそのまま活用できます。
- CATIA 3DEXPERIENCE画面の使い慣れたGUI環境下で、違和感なく3DCSの操作ができます。
NX版
- Siemens社のNXプラットフォームに完全対応。
- NX内から3DCSを直接起動できるだけでなく、多くのNX特有のモデリング機能の恩恵を3DCSでも受けることができます。
Multi-CAD(スタンドアロン)版
- 優れた互換性により複数CADで解析を行う環境でも使用でき、またCAD環境をお持ちでなくても使用可能です。
- Windowsベースのインターフェースなので、簡単な手順でデータを読み込むことが可能です。
3DCS 製品構成
3DCSには、基本構成パッケージとして以下のソフトウェアが用意されています。
3DCS Variation Analyst (3DCS)
3DCS Variation Analyst は、解析担当者向けに用意されたソリューションです。フィーチャーベースでの解析+任意の基準点を使用するポイントベースでの解析により、詳細な解析が可能です。3DCS Mechanical Variation Analyst (3DCS Mechanical)
3DCS Mechanical Variation Analyst は、機構解析者向けに用意されたソリューションです。 フィーチャーベースでのアセンブリ製品の機構的な組付けを考慮した公差解析が容易に実行できます。
3DCSの基本構成パッケージに、目的に応じた3種類のオプションがアドオン可能です。
3DCS FEA Compliant Modeler | 3DCS Advanced Analyzer/Optimizer | 3DCS Mechanical Modeler | |
---|---|---|---|
3DCS Variation Analyst | ○ | ○ | ○ |
3DCS Mechanical Variation Analyst | — | ○ | ○ ※構成に含まれています |
※NX版は3DCS Variation Analystのみとなります。
3DCS 製品の特徴
3DCSの特徴
- 設計目標に対し、どの部品のどの公差が最も影響を与えているかを示す寄与度を表示
- 組立順序をアニメーション表示で確認
- 最終組立における製品のバラツキをアニメーション表示
- 製品モデルが未完成でも、主要な形状寸法さえ分かれば解析可能
- 製造プロセスの違いを考慮して様々な統計分布タイプを選択可能
- モンテカルロシミュレーション、寄与率、感度解析(製品形状を変更するか否かの判断を支援する分析)の3タイプの分析による出力
- 部品と組立における重要な寸法について評価を行い、設計のロバスト性を向上
- 3次元測定データを取り込み、解析分析を行うことが可能
3DCS Mechanicalの特徴
3DCS Mechanicalでは、従来の3DCSの移動(Move)ルーチンがジョイントや拘束の定義に新たに置き換えられ、機構的な動きの中での公差解析を実現し、より使い易くお客様をサポートします。
- DCS Tolerance:アセンブリロケータと測定要素のバリエーションを公差に適用
- FTA GD&Tの抽出および更新: パート、プロダクト等のCADデータに埋め込まれたFTAデータの抽出が可能
- 3DCS Measurements:距離の定義、ポイントと
フィーチャー、フィーチャーと角度の測定が可能 - 分析手法: モンテカルロ、HLM、3DCS Advanced Analyzer/Optimizer & ワーストケースを利用
- 公差の最適化: 3DCS AAOによる公差の最適化が可能
- 自動レポート: モデルの入出力レポートが可能
- キネマティックシミュレーション: アセンブリの機構シミュレーション解析が可能
- キネマ機能を実現するアドオン3DCS Mechanical Modeler:
- ジョイントと動的定義を行うライブラリを使用することで、ユーザーが直接組立工程をモデル化
例)Three-Barリンケージを3つの回転ジョイントの動きでモデル化 - CATIA V5で作成されたDMU KINジョイントを自動的に3DCSへインポート可能
- マルチステージアセンブリをサポート
- 複数の運動定義の範囲のステップで解析が可能
- ジョイントと動的定義を行うライブラリを使用することで、ユーザーが直接組立工程をモデル化